アクセス解析ツール10製品を13年後に生存確認した——半分が消え、1つは事故を起こした

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「アクセス解析ツールって、結局Googleアナリティクスでいいんでしょ?」

そう聞かれて、否定する材料をすぐには出せなかった。有料ツールの名前をいくつか挙げようとして、頭に浮かんだのは「サイトカタリスト」だった。口に出す前に手が止まった。その名前を最後に見たのがいつだったか、思い出せなかった。

手元に、2013年ごろに書かれた「主要アクセスログ解析ツールを費用順に並べてみる」という記事のメモが残っていた。中規模から大規模サイト向けの有料ツールを、3年間の累計コストで1位から10位まで並べたものだ。当時は納得して読んだ記憶がある。

13年経った今、この10製品はどうなっているのか。 1つずつ照合してみたら、想像より荒れた結果になった。

2013年のランキング

まずメモに残っていた並びを再掲する。「費用が高い順」のランキングで、3年間の累計コストで比較されていた。

順位製品名提供元(当時)
1SAS Customer Experience AnalyticsSAS
2Google アナリティクス プレミアムGoogle
3Adobe SiteCatalyst(サイトカタリスト)Adobe
4IBM Coremetrics(コアメトリクス)IBM
5Visionalist(ビジョナリスト)NTTコム オンライン マーケティング ソリューション
6RTメトリクスオーリック・システムズ
7Web Trends(ウェブトレンズ)サムライズ
8Logエビス(ログエビス)ロックオン
9Site Tracker(サイトトラッカー)キーポート・ソリューションズ
10User Insight(ユーザーインサイト)ユーザーローカル

番外として無料版Googleアナリティクスが置かれていた。5つのうち4つが海外製、という当時の総括もメモにあった。

13年後の生存確認

公式サイト・公式発表・報道を当たって現況を確認した。結果を先に出す。

2013年の製品2026年時点の状況
SAS Customer Experience Analyticsこの領域のSASの現行製品は SAS Customer Intelligence 360。CDPを内包したオムニチャネルのマーケティングハブに変わっている
Google アナリティクス プレミアムGoogle Analytics 360(GA4)。⚠️旧世代のユニバーサルアナリティクスは処理停止済み(後述)
Adobe SiteCatalystAdobe Analytics に改名。さらに Adobe Customer Journey Analytics が兄弟製品として並立
IBM CoremetricsIBM Digital Analytics を経て、2019年にIBMのマーケティング事業ごと売却され Acoustic へ(後述)
Visionalist🔴2020年7月31日でサービス終了。さらに終了後に事故が起きている(後述)
RTメトリクス現役(RTmetrics)。むしろ機能を広げている
Web Trends現況を公式ソースで確認できなかった
Logエビス提供元が ロックオン → イルグルム(2019年8月1日 商号変更)。現在の主力は広告効果測定の AD EBiS。ログエビス自体の提供状況は確認できなかった
Site Tracker現況を公式ソースで確認できなかった
User Insight現役。10製品中もっとも大きく進化している(後述)

明確に「今も同じ名前で提供されている」と確認できたのは、RTmetrics と User Insight の2つだけだった。 上位を占めていた海外製4製品はすべて名前か所属が変わっている。

正直に書いておくと、Web Trends・Site Tracker・ログエビスの3つは「終了した」とは断定していない。公式の一次情報で現況を確認できなかった、というだけだ。この差は大事なので、以下でも区別して書く。

上位4製品に起きたこと

Google:無料版も有料版も、旧世代は消えた

2013年のメモには「月額費用100万円~、3年間累計では4000万円程度」「無償版からおいそれとは乗り換えられない価格帯」と書かれていた。

実際に起きたのは、価格の話ではなかった。 Googleは世代交代そのものを強制した。公式のヘルプによれば、標準のユニバーサルアナリティクスは2023年7月1日にデータ処理を停止し、360のプロパティには1回限りの延長が与えられて2024年7月1日に終了した。そして360については、2024年7月1日の週からプロパティもAPIも読み取り専用でさえアクセスできなくなり、データは削除されるとされている。

さらに、360の利用者は既存のユニバーサルアナリティクスのプロパティを360へアップグレードすることができず、新しいGA4プロパティへ移行する必要があった

つまり「無料版か有料版か」という選択の前に、どちらを選んでいた人も一度作り直しを迫られた。 2013年の比較軸には、この種のコストが存在していない。ツールの寿命という項目が、ランキングの列にないのだ。

Adobe:名前が変わり、製品が2つに分かれた

サイトカタリストは Adobe Analytics に改名された。「その名前を最後に見たのがいつだったか思い出せない」のは当然で、製品が消えたのではなく看板が変わっていた。

そして今は Adobe Analytics と Adobe Customer Journey Analytics が、Adobeの分析ポートフォリオの中で目的の異なる兄弟製品として併存している。ドキュメントの説明を要約すると、Adobe Analytics は独自のデータ収集でWebとモバイルの行動を測り、収集時に固定されたレポートスイートのスキーマに乗る。一方 Customer Journey Analytics は Adobe Experience Platform のデータセットに依存し、任意のデータソースをレポーティングと分析の対象にできる

用語まで変わっている。バーチャルレポートスイートは「データビュー」、クラシフィケーションは「ルックアップデータセット」と、業界標準に合わせて改名されたとドキュメントに明記されている。同じベンダーの製品でも、13年前の知識は用語レベルで通用しない。

IBM:製品ではなく事業ごと売られた

これが一番構造的な変化だった。

2013年のメモは「数年前にIBMがコアメトリクス社を買収してIBM製品となった」「最近IBMはマーケティングテクノロジー領域において積極的に活動をしている」と書いている。当時の見立ては妥当だったのだろう。

しかし2019年4月、Centerbridge Partners と IBM が、IBMのマーケティングプラットフォームとコマースソフトウェア事業をCenterbridge傘下のファンドが買収する契約を発表した。買収は同年6月末に完了し、独立企業 Acoustic が立ち上がった。IBMから引き継いだ顧客は約3,500社、人員は1,100名と報じられている。

Coremetrics の系譜はこの事業に含まれており、現在は Acoustic Digital Analytics として扱われている。

ここから引ける教訓は、「大手ベンダーだから安心」は、製品の継続性を保証しないということだ。IBMという社名は消えていないが、その製品はIBMの外に出た。買い手はプライベートエクイティで、そこから先の方針は当初の想定と別の論理で決まる。

SAS:ツールがプラットフォームに変わった

SASのこの領域の現行製品は SAS Customer Intelligence 360 である。CDP(顧客データプラットフォーム)を内包し、ジャーニー作成とデータ活用を1つのオムニチャネルのマーケティングハブにまとめたAI駆動の顧客エンゲージメント基盤、という位置づけになっている。

「アクセス解析ツール」というカテゴリで語れるものではなくなっている。2013年のメモが「SASと連携しアクセスログと企業内のあらゆるデータを組み合わせながら解析が期待できそうだ」と書いていた方向に、製品定義そのものが動いた形だ。

Visionalist:終了した後に事故が起きた

10製品の中で、これが最も重い話だった。

Visionalist は2003年から2012年までデジタルフォレスト社が提供し、その後の買収を経てNTTコム オンライン マーケティング ソリューションが運営していた。JavaScriptタグを埋め込み、閲覧者のブラウザでスクリプトを実行してアクセスログを収集・解析する、よくある方式のツールだ。

サービスは2020年7月31日に終了し、システムは同年9月30日に停止した。 ここまでは、事業判断としてよくある話である。

問題はその後だ。2022年、Visionalist が使っていたドメイン(tracer.jp)が第三者に取得された。 提供元は、サイトに残っている tracer.jp のタグを削除するよう法人顧客へ注意喚起を出している。報道によれば、新しいドメイン登録者はタグが残っていた環境に対してスクリプトを配信しており、その中には過去に水飲み場攻撃で使われたものと同じスクリプトが含まれていたとされる。タグが残存していたサイトは約800件と報じられている。

構造を整理するとこうなる。

  1. 解析タグは、外部ドメインから読み込むスクリプトである
  2. サービスが終了しても、タグを消すのはサイト運営者の責任であり、自動では消えない
  3. ドメインの登録が切れれば、誰でも取得できる
  4. 取得した第三者は、残存タグ経由で任意のスクリプトを配信できる

つまり、終了したツールの消し忘れたタグは、他人にサイト上でのコード実行権を渡している状態になる。「もう使っていないから害はない」ではない。害は、使わなくなってから発生する。

これは2013年の費用ランキングの列には絶対に載らない種類のリスクだ。そして今、自分のサイトに何年も前のタグが残っていないかを確認する動機として、これ以上のものはない。

生き残った2製品に共通すること

一方で、13年を生き延びた2つには共通点があった。どちらも「アクセスを数える」という自己定義から動いている。

RTmetrics:収集方式を増やした

2013年のメモは、RTメトリクスを「タグを埋め込むSaaS型が多くなる中、唯一パケットキャプチャ型ツールを提供し続けており骨太なイメージ」と評していた。当時は「時代に逆行しているが芯がある」というニュアンスに読める。

現在の RTmetrics は、ログ型・タグ型・パケットキャプチャ型のすべてのデータ収集方式に対応しており、GDPRにも対応しているとされる。AWS VPC Traffic Mirroring への対応もアナウンスされている。国内での提供開始から20年、国内400社超、16,500以上のライセンスというロングセラーの実績が示されている。

「パケットキャプチャ型の会社」から「収集方式を選べる会社」に変わった。 尖っていた部分を捨てずに、選択肢として抱え込む方向で拡張している。サーバーサイドでの計測需要が高まった今、この方向は結果的に噛み合った。

User Insight:AI検索での引用を測り始めた

2013年のランキングで最下位、つまり最も安かったのがこれだ。メモには「ログ分析ツール業界最低水準価格を謳い文句にしている」「3年間の累計は365万円」とある。

現在の User Insight は、生成AIでのコンテンツ作成・分析・Web接客ができる総合デジタルマーケティングツールと自らを位置づけている。公式サイトで確認できる機能を整理すると、こうなる。

領域機能
コンテンツ作成AI記事生成・リライト、ランディングページ自動作成、コピーの検証・ファクトチェック、AI広告コピー生成
分析ヒートマップ12種(最大4件同時比較)、アクセス解析とカスタムダッシュボード、SEOキーワード調査、リアルタイム監視
Web接客ポップアップ配信(ノーコード)、離脱防止、A/Bテスト、埋め込みバナー
AI検索対応LLMO(生成AIでの引用トラッキング=ChatGPT・Gemini・Claude、Google AI Overviews のモニタリング、AI経由の流入分析)

最後の行が象徴的だ。「ChatGPTやClaudeが自分のサイトを引用したか」を測る機能は、2013年には存在しえない概念である。検索エンジンからの流入を測るツールだったものが、生成AIからの引用を測るツールに射程を広げている。

価格は公開されておらず「PV数に応じた複数プラン」「オプション課金なしで全機能利用可」と示されている。3年累計で比較できる形にはなっていない。

費用ランキングという見方が成り立たなくなった

ここまで照合して、2013年の記事と同じ形式のランキングを2026年版として書くことはできないと判断した。理由は3つある。

1つ目は、価格がほぼ公開されないこと。 エンタープライズ向けの製品は当時から価格非公開が多かったが、現在はさらに「PV数に応じたプラン」「機能の組み合わせ」「代理店経由の見積り」が前提で、公開情報から3年累計を算出できる製品がほとんどない。2013年のメモ自身が「あくまで順位やコストの概算は、一定条件下の推定であり、なんとなくの順位である」と正直に留保していたが、その留保が成立する余地すら狭くなっている。

2つ目は、比較対象が同じカテゴリに収まらないこと。 CDPを内包したマーケティングハブと、パケットキャプチャ対応の解析ソフトウェアと、AI記事生成つきのSaaSを、同じ表の縦に並べて費用で順位づけしても意味が出ない。買っているものが違う。

3つ目は、コストの主要項目が「移行」に移ったこと。 ユニバーサルアナリティクスからGA4への移行で多くの現場が払ったのは、ライセンス費用ではなく設計のやり直しと、過去データの扱いに関する意思決定だった。3年累計の費用表には、この列がない。

それでも2013年の記事が当てていたこと

批判的に読んできたが、当時の結論部分は驚くほど当たっている。メモの締めはこうだった。

アクセス解析ツールが、“アクセス"を解析するのではなく"顧客"を解析し、次のマーケティング施策へのインプットとして意思決定支援ツールに変わっていくことを示唆しているのかもしれない。

この予測は、13年後にほぼその通りになっている。 SASはCDP内包のマーケティングハブになり、AdobeはExperience Platform上で任意のデータソースを扱うCustomer Journey Analyticsを別製品として立てた。「アクセスを数える」から「顧客を解析する」への移動は、実際に製品定義のレベルで起きた。

そして当時挙げられていた高価格の理由——「広告効果やA/Bテストなどの動的なアクションへの対応」と「他のメディアやシステムとの連携」——この2軸も、そのまま今の差分になっている。User Insight がWeb接客とA/Bテストを標準で抱え込んでいるのは、まさに1つ目の軸だ。

今の選定で見るべき軸

以上を踏まえて、費用の代わりに置くべき列を整理した。

見るポイント
終了・移行リスク提供元の資本構成は変わっていないか。過去に世代交代でデータ削除を伴った実績はあるか。EOL方針が公開されているか
データの持ち出し生データをエクスポートできるか。できる形式は何か。契約終了後の保持期間はどうなるか
タグの撤去容易性どのドメインからスクリプトを読むか。やめるときにどこを消せば完全に外れるか(Visionalist の事故はここが焦点)
プライバシー規制対応GDPR・個人情報保護法への対応。同意管理との連携。サーバーサイド計測の選択肢があるか
AI検索での可視性生成AI経由の流入や引用を測れるか。従来の検索流入だけを見ていると流入構造の変化を取り逃す
機能の妥当性自社が実際に見る指標に対して過剰でないか。使わない機能の費用を払っていないか

特に3行目は、13年前には誰も列に入れていなかった。 導入時の検討項目に「やめ方」を入れるべきだと、Visionalist の事例が教えている。

まとめ

2013年のランキングに載っていた10製品を照合して分かったのは次の点だ。

  • 同じ名前で今も提供されていると確認できたのは RTmetrics と User Insight の2つだけ。上位を占めた海外製4製品はすべて改名か所属変更を経ている。3製品は公式の一次情報で現況を確認できなかった
  • Googleは価格ではなく世代交代でユーザーを動かした。ユニバーサルアナリティクスは標準が2023年7月1日、360が2024年7月1日に処理を停止し、データは削除される方針が示されている
  • IBM Coremetrics は製品単体ではなく事業ごと売却され Acoustic になった。大手の社名は継続性を保証しない
  • 🔴Visionalist は2020年の終了後、旧ドメインが第三者に取得され、残存タグ経由で不審なスクリプトが配信された。約800サイトにタグが残っていたと報じられている。使わなくなってから害が出るタイプのリスクである
  • 生き残った2つは、どちらも自己定義を動かしている。RTmetrics は収集方式を増やし、User Insight は生成AIでの引用トラッキングまで射程に入れた

そして最初の問い——「結局Googleアナリティクスでいいのか」への答えは、13年前とは違う形になる。無料か有料かではなく、「そのツールが終わるとき自分は何をしなければならないか」を先に確認しておくべきだというのが、この照合から得た結論だった。

まずは自分のサイトのHTMLを開いて、もう使っていない解析タグが残っていないかを検索してみてほしい。費用の話より先に、そこが片付いていない可能性がある。


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生存確認の最後に出てきた「生成AIでの引用トラッキング」を追うなら、先にLLMそのものの動き方を押さえておくと判断が速い。

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