「VPC Service Controls のエラーログ、なかなか見つからない…」
Google Cloud を使っている多くの方が、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。ただ VPC Service Controls と文字列検索しても、UI上には表示されるのに、フィルタにはヒットしないことがよくあります。
この記事では、Cloud Logging のフィルタ機能を使って、VPC Service Controls (VPCSC) のエラーログを確実に、そして効率的に見つけ出すための方法を解説します。
なぜシンプルなフィルタでは不十分なのか?
Cloud Logging の検索窓に “VPC Service Controls” と入力してもログが見つからないのは、ログの表示方法と実際のデータ構造が異なるためです。
ログの表示と実際のデータ構造の違い
Cloud Logging の UI 上で表示される「VPC Service Controls」というテキストは、ログエントリの**構造化されたデータ(JSON)**の中から抽出されたり、UI独自のラベルとして表示されていることがほとんどです。そのため、単純な文字列検索では目的のフィールドにたどり着けないのです。
VPC SC エラーログの特徴
VPC Service Controls のエラーログは、以下の特徴を持っています:
1. 特定のログタイプに分類される
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のような、ポリシー監査ログに分類されることが多いです。
2. 構造化されたエラー情報
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このような構造の中に、エラーの理由や詳細が格納されています。
効果的なフィルタ条件:3つのレシピ
ログの構造を理解すれば、あとは適切なフィールドを指定するだけです。以下に、VPC SC エラーを抽出するための3つの強力なフィルタ条件をご紹介します。
レシピ 1:メタデータタイプでフィルタする(最も正確)
VPC SC の監査ログには、固有のメタデータタイプが設定されています。これを直接指定することで、最も正確にログを絞り込めます。
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使用場面: VPC SC 関連のすべてのログを確実に抽出したい場合
メリット:
- 最も正確性が高い
- 偽陽性(関係ないログ)が最も少ない
- VPC SC の設定変更履歴なども含めて検索可能
レシピ 2:違反タイプでフィルタする
VPC SC のエラーログには、violations(違反)というフィールドが含まれており、その中に違反タイプが明記されています。
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使用場面: アクセス拒否など、実際の違反ログのみを見たい場合
メリット:
- エラーログに特化した検索が可能
- 違反の詳細情報も同時に取得できる
- トラブルシューティングに最適
レシピ 3:ステータスメッセージでフィルタする
VPC SC によるアクセス拒否エラーのメッセージには、vpcServiceControlsUniqueIdentifier
という文字列が含まれていることが多いです。
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使用場面: エラーメッセージから問題を特定したい場合
メリット:
- 人間が読みやすいエラーメッセージとともに検索
- ユニーク識別子でサポートケースとの照合が容易
- 具体的なエラー内容が把握しやすい
実践的な組み合わせフィルタ
基本的な組み合わせ
上記のいずれか1つのレシピに加え、以下の条件を追加することで、より確実に目的のログにたどり着けます。
エラーログに限定
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エラーログに限定することで、無駄なログを排除できます。
ログタイプを指定
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VPC SC のログは、ポリシー監査ログに分類されることが多いため、このログ名で検索すると効率的です。(YOUR_PROJECT_ID はご自身のプロジェクトIDに置き換えてください)
完全なフィルタ例
パターン1: 包括的なVPC SCログ検索
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パターン2: アクセス拒否エラーに特化
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パターン3: 特定のサービスに関連するエラー
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ログ分析のベストプラクティス
1. 時間範囲の指定
大量のログがある環境では、時間範囲を適切に指定することが重要です:
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2. 複数条件の組み合わせ
AND条件とOR条件を適切に使い分けます:
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3. 結果の並び替えとエクスポート
検索結果は時系列順に並び替えて分析し、必要に応じてエクスポートします:
- CSV形式: スプレッドシートでの分析用
- JSON形式: プログラムによる後続処理用
- BigQuery: 大規模なログ分析用
トラブルシューティング時の活用方法
1. インシデント対応での使用
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2. 定期的な監視
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3. コンプライアンス監査
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まとめ
VPC Service Controls のエラーログは、単なる文字列ではなく、ログの**構造(JSON)**を理解してフィルタをかけることが重要です。
フィールド | 目的 | 使用場面 |
---|---|---|
protoPayload.metadata.@type |
最も正確なタイプでログを絞り込む | 包括的な調査 |
protoPayload.status.details.violations.type |
違反の種類を特定する | エラー分析 |
protoPayload.status.message |
エラーメッセージ内の固有文字列を検索する | トラブルシューティング |
これらのフィルタを使えば、VPC SC のエラー調査が格段に効率化されるはずです。
次のステップ
- 自動化: 定期的なログ監視をCloud Functionsで自動化
- 可視化: Cloud MonitoringでVPC SCエラーのダッシュボードを作成
- アラート: 重要なVPC SC違反に対するアラートポリシーを設定
VPC Service Controlsは組織のセキュリティを守る重要な機能です。適切なログ分析により、セキュリティポスチャの向上と迅速な問題解決を実現できます。
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